野球の祭典、第4回WBC(World Baseball Classic)がいよいよ佳境に入った。
大会前の壮行試合での結果を見て、今回の侍ジャパンへの期待度は低かった。その前評判を大きくくつがえしての大進撃六連勝。数々の死闘を制してのベスト4進出。日本人として、そして一野球人として、誇りを感じずにはいられない。
準決勝で対戦するアメリカは、全員がメジャーリーガー。メジャー通の自分にとってはほぼ全員知っている顔ぶれ。名将リーランドが監督としてチームを率いる。初の悲願達成に向けて本気モードだ。侍ジャパンは前回大会の2013年は準決勝敗退。雪辱を晴らして王者奪還へ向けてのこの準決勝、そして決勝の2連戦は厳しい戦いとなるだろう。
侍ジャパンは、まさに全員がそれぞれの役割・持ち味を発揮した総合力で、パワーで上回る中南米諸国を制してきた。その特徴は、かつて「スモール・ベースボール」と表現されたものとは違う。足でかき回す野球ではない。パワーでは主軸の筒香、中田、スピードボールでは千賀、メジャーに引けを取らない。美技連発のセカンド菊池、侍唯一のメジャーリーガー青木のリーダーシップ、インコース打ちの達人、打率トップの坂本。シンデレラボーイの捕手小林の存在。クローザー候補の一人、サブマリン牧田は驚異だろう。けっして一人では抗えないが、チームとして組織としての総合力が機能している。打順も固定は3、4番のみで、投手救援の順番もあえて固定していない。相手には不気味に移るはずだ。
そしてなによりも、2015年のプレミア12以降、批判の声が多かった小久保監督も、彼の選手のハートを掌握する人間性を賞賛する声も聞かれるようになった。試合前の覚悟を決意した話振り、そして試合後の安堵を浮かべた表情での勝利インタビュー。現役時代の豪快さからすると、最近の小久保監督は以前よりずいぶん痩せて見える。彼の心境が痛いほど伝わる。
そして舞台はアメリカL.Aに移る。まさに佳境に入った。「佳境に入る」とは、そもそも「演劇や物語等の最も興味深い、面白い場面になること」という意味で、ある状況の頂点・最盛期という「ヤマ場」と同義語ではないらしい。英語に訳せば、「佳境=クライマックス」。聞いただけでわくわく感が引き立つワードだ。
小久保監督率いる侍ジャパンのチーム力・組織力から、学ぶべきことが多いとは思うが、それはともかく今はこの「クライマックス」を単純に楽しみたい。