数多く存在する経営課題の中から、重要にして緊急に改善すべき課題に優先順位を付け、その解決策をあらゆる角度から考えて策定し、策定した解決策を戦略的に実践して、課題を解決していくことが経営の要諦だ。
経営課題といっても、その性質は様々だ。短期的・中長期的なもの、そして過去から現在、未来に渡って変わることのないもの。経営課題に設定すべきものを見逃す、もしくは軽視することこそ、経営の失敗の本質である。どの課題を解決するのかを見定める知性・感性・眼力こそが経営者に必要な能力である。
当社が直面している経営課題の中で、重要にして緊急度の高い、そして短期的にも中長期的にも、そして昔も今もこれからも、最重要と考える経営課題は人財確保・人財育成である。
どの会社どの業種業界でも叫ばれる人手不足という経営環境の中、どのように人財を確保していくか、共通の課題であろう。人財の確保は、むろんリクルート(求人)のことばかりではない。縁あって入社してもらった社員がどのようにすれば定着し、戦力となっていくか、そして後輩・部下を育てられる人財となっていくか。人財の確保と育成、その繰り返しが会社の歴史の一コマ一コマを創り、積み重なって今の形があるのだ。
当社には長い歴史があり、そのノウハウがあるはずだ。しかしここ数年間、経営環境が劇的に変化する中、既存の体制・組織ありきとして目先の課題克服に執着し、さらには会社として仕事を行う上での共通の価値観を社員と共有する場面が減りつつあった。
石油需要縮小というもう一つの大きな経営課題が表面化している中、積年の課題である人財確保・育成に対して今こそ戦略的に実践していく時機である。
11月1日、運輸事業部門に所属する初任乗務員(概ね入社3ヵ月未満の乗務員)の集合教育を本社で行った。会社としては初めての取り組みである。一昔と違い、ローリー未経験の乗務員の入社が増えている中(この状況は人手不足という経営環境下、必然である)、教育の重要性は以前よりも格段に増している。地方の各事業所で採用された新人乗務員が本社に一同集結することで、当社の一員としての自覚、プライド(矜持)を強く持ってもらう狙いもあった。
なにぶん初めての試みであり、最初の35分を予定していた私の講義時間も大幅に伸びてしまった。時間管理を含めた集合教育全体の運営には課題を残したが、この反省を生かした上でこれからも四半期に1度のペースで開催し続け、当社乗務員としてのスタートラインに立つ出席者と一緒にこの場を共有する。乗務員としてのゴール(目標)を明確に示し、そして彼らの背中を常に押し続ける(成長を応援する)という、社長として乗務員に対して行うべき役割を果たさなければならない。素晴らしい人財になってくれることを願いながら。
折しもこの日、創業95年目を迎えた。