新型コロナ感染がなかなか収束しない中、いよいよ10月から東京都も含めた「Go To キャンペーン」が始まった。「Go To」は、旅行(宿泊・レジャー)業や外食産業など、移動制限により大打撃を受けた業界への救済がその目的である。コロナ収束と経済活動の再開という、ともすると二つの相反する高難易度の課題を同時並行的に達成する使命を、日本国政府や地方自治体は果たさなければならない。企業経営にもよく使われる「二律背反克服の精神」が求められている。
しかし、これはすべての責任が国や地方にあるということではない。我々一人一人の人間性・倫理観が大前提。最低限の感染予防策は一人一人の責任である。
見方を変えると、法律やルールだけでは、すべてを網羅することはできないということ。これは仕事、特に物流現場を担う当社にも当てはまることで、すべてを社内ルールやマニュアル化で問題解決できるわけではない。その土台には、常識、人間性や倫理観、道徳心、横文字(カタカナ)で言えば、マナーやモラル、エチケットがなければ、お客様により高い物流品質(サービス)の提供が叶わない。交通ルールを守るだけではなく、交通マナーをも身に付けなければならない。公道を利用して事業を行っている我々運送事業者にとってはなおのこと。ルール・マニュアルの教育の前に、この土台部分へのアプローチが大切になる。
マナー教育とは、様々な業種業界で行われている。特にサービス業では当たり前のものだ。しかしながら、同じサービス業界とも言える物流業界、とりわけ運送業界は、技術的な教育・訓練やルール・マニュアル勉強には時間を費やしてきた一方で、このマナー教育に対してあまり積極的ではなく、時間を掛けてこなかったのは事実だ。
世の中が変化し、社会の一企業に対する目が厳しくなる中、後回しにしがちで時間を端折(はしょ)ってしまいがちなこの土台部分について、今年度より新入社員時の教育、そして年1度の全社員対象のコンプライアンス教育という形で対応することとした。しかし教育は一度やっておしまいではなく、定期的に、やり方・手段を変えながら、継続的に一人一人に意識付けしていかなければならない。
そして現在、社内でも対面での会議・研修ができない代わりにリモートワークやWEB会議が頻繁に行われる。直接伝えられない、そして1:N(話し手一人に対して複数の視聴者)型のコミュニケーションのため、どうしても一方通行的になる。これまで以上に伝える力、プレゼン力を身につけなければならない。
二律背反克服の精神、マナー教育、伝える力・プレゼン力。これらの必要性が日に日に増している。現状を嘆いている暇はない。